俺ガイル ss。 『俺ガイル』主人公、比企谷八幡を描いたおすすめSS・二次小説作品まとめ【随時更新】

俺ガイルおすすめSSまとめ【やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】

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【俺ガイルSS】雪ノ下「比企谷くん、あなたいくら眼が濁ってるからって……」【はまち】

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オススメ作品 個人的名作・特におすすめの作品 よくある「嘘から出た真」系のお話。 個人的には大好物でして、本作は雪乃がとても魅力的に描かれている良作です。 これはいいコメディ。 サブレがいい味出しています。 これはいいいろはす。 大学でいろはに再会してからの短編3連作です。 こうした作品が読めるのはSSならではですね。 さりげない心理描写も上手で、かなりのSS巧者とお見受けしました。 主人公がヒロインに看病されるという、SSではよくあるシチュエーションですが、このいろはすはかなりポイント高いです。 みんな素直だったら・・・というIF。 カナダってすごい。 お笑いコンビ「アンジャッシュ」のコントのような作品・・・と言えば大体どんな内容か伝わるでしょうか。 起承転結が上手くまとまっていて、SSの見本のような作品です。 本作は結衣がメインです。 タイトルから推測できるとおり、八幡と雪乃の間の子どもである「比企谷小雪」が登場するのですが、オリジナル子どもキャラが登場する俺ガイルSSでは、本作が個人的に最高傑作だと思っています。 ラストシーンが愛おしいほど素晴らしいです。 WEB小説投稿サイトからは、こちらの作品をチョイス。 ストーカー被害に遭い、奉仕部へと駆け込むいろは。 解決のため八幡が偽装彼氏となるが・・・というお話。 際どい表現があるのでご留意を。 奉仕部がある以上、納得感のある形でいろはと距離を縮めるには相当な描写の積み重ねが必要で、本作はそれを高いレベルでクリアしており、いろはモノとしては最高峰でしょう。 素晴らしい作品。 ヒロイン3人との絶妙な関係性・距離感が、軽快なやりとりでスラップスティック的に展開されます。 台詞回しも自然で滅茶苦茶レベル高いです。 個人的には俺ガイルSSの1つの到達点とも言える作品です。 シチュエーションがいいですね、大好物です。 本好きの2人の距離を縮めるためのそのアイデアに脱帽しました。 その他のおすすめ作品 平塚先生物。 「ウブ・思い込み激しい・すぐ泣く」という二次創作における静先生の要素が程よくまとまっている作品です。 珍しい三浦物。 原作の世界観とかけ離れることなく、絶対に描かれないであろうストーリーを上手に魅せてくれます。 催眠術で八幡を葉山のようにすると・・・というお話。 SSならではの設定ですが、それを上手に料理していて面白いです。 タイトルとは違い実際には、奉仕部の3人のお話。 なるほど、こういうSSもありなのか、と思わされました。 メタ的な楽しみができますね。 設定が一捻り。 好き嫌いがあるかもしれませんが、私は純粋に感心しました。 こういうSSを書こうとする発想は自分では出てこないですね。 脱帽です。 ホワイトデーで女性陣にお返しする様子が淡々と描かれますが、これくらいサラッとした作品もいいと思います。 俺ガイルSSでなくても通用しそうですが、こういうしっとりとした作品もアリです。 の作者の作品のようです。 バレンタインデーのIF。 特定のカップリングはなく、雪乃・結衣・いろは・沙希・小町が登場します。 こちらもバレンタインデーのIF。 奉仕部の3人を中心にバレンタインデーの様子が丁寧に描かれます。 本当に共感できる「あるある」で笑ってしまいました。 後半は初詣のお話。 八幡がみんなに誕生日を祝ってもらいます。 誰の娘なのか一目瞭然ですね。 雪乃分がかなり色濃くでた娘ものです。 ドラマCDとかにしてほしい作品です。 ホワイトデーのお話。 丁寧な描写に好感が持てます。 別にクロスオーバー作品ではなく、中の人つながりの折本もので、中身は程よいイチャイチャもので、こういう世界線もありかな、と思わされます。 タイトルどおり、席替えによって始まる新たな俺ガイルの物語・・・。 未来からやってきたという三人の娘はそれぞれ母親が違って・・・オリキャラ注意ですが、筆力高いので、気になりません。 起承転結もしっかりしており、かなりの良作です。 俺ガイルSSといっていいかは微妙ですが、そのアイデアに脱帽です。 八幡がいない奉仕部でヒロイン3人が、八幡について語ります。 3人がどんな表情・動きで盛り上がっているかが想像できそうな高い描写力のある作品です。 折本好きにぜひおすすめしたい作品。 折本作品の展開は大体どの作品も同じようなルートを通るわけですが、台詞回しも自然で原作に近い空気感なので、こんなルートもあり得るのかな、と思わされます。

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【俺ガイルSS】雪ノ下「比企谷くん、あなたいくら眼が濁ってるからって……」【はまち】

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09 ID:fXDvOLLe0 ガガガ文庫 渡 航 著 「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」SS 10巻、冬休み明け間もない頃の話という設定です。 一色「素敵な男子に壁ドンされるなんて、女の子にとってはもう最っ高の萌えシチュじゃないですか!ね、先輩?」 八幡「…いや、ね?とか言われても俺知らんし」 唐突に話を振られた俺はスマホの画面から顔を上げ、一部では稲毛海岸に流れ着いた死んだ魚に勝るとも劣らぬと定評のある目を更に腐らせて一色を見た。 どうでもいいけど、ぼっちってひとりで時間潰す事が多いからスマホのバッテリー無くなるのやたら早いんだよな。 その分電話帳のバックアップとかは要らないんだけど。 八幡「…まぁ、そうだな」渋々ながら俺も彼女に同意する。 雪ノ下のその言い方もどうかとは思うのだが、確かに男である俺にそんな事訊かれたって答えようがないだろ…その言い方もどうかとは思うが。 大事なことなんでとりあえず二回言ってみました。 八幡「…ちょっと待て雪ノ下、さすがにそれは言い過ぎだろ」 雪ノ下の毒舌はいつものこととはいえ、やはり後輩もいる手前、今日こそはひとつビシッと言っておいた方がいいだろう。 25 ID:fXDvOLLe0 結衣「でも壁ドン…かぁ…」由比ヶ浜が片手でぽわぽわとお団子髪を弄びながらそれとなく横目で俺を見た。 なんぞと返した俺と目が合った途端、慌てて横を向いてしまったが、その仄かに赤くなった耳を見ればさすがに鈍い俺といえどもピンとくる。 でもコイツ、確かついこの間まで人間ドックのこと人面犬と勘違いしてなかったっけ? 八幡「そうなのか?そりゃ悪かったな。 じゃあ、お前、壁ドンがどんなもんか説明してみろよ」 結衣「…………へ? えっと、ほら、アレでしょ?なに?なんかこう、壁にドーンって…」 言いながら右手を突き出して見せるその仕草はどちらかというと、いや、むしろ限りなくガチョーンのそれに近い。 昭和かよ。 どうやら由比ヶ浜をフォローしたつもりらしいが、残念ながらまるでフォローになっていない。 むしろ追い討ちに等しい。 こいつってば相変わらず他人のこと慰めるのとか超下手なのな。 「仕方ないんだ…」さりげなく切り捨てられた由比ヶ浜の顔がリアルでショボーンみたくなっているがそこは敢えてスルーで。 だが、そう言われて見ればいつの間にそんな話になったのか始めから聞いていたはずの俺にもイマイチよくわかっていない。 確かこいつらさっきまで「寒いからシチューが美味しい季節になったね」とか「余ったシチューは焼きシチューにするといいらしいですよ」なんて言いながら料理の話で盛り上がってなかったっけ? おいおい、もしかして焼きシチューが萌えシチュになって壁ドンって、いくらなんでも自由すぎだろ。 あれな、女子の会話って脈絡もなく話題がポンポン変わるから、ホント話の展開についていけないんだよな。 まぁ俺の場合、最初から話の輪に加えてもらえないから特に問題ないんですけどね。 13 ID:fXDvOLLe0 一色「と・に・か・く、葉山先輩なんかに壁ドンなんかされちゃったら、もう、どんな女の子だって即オチですよ、即オチ」 俺や由比ヶ浜と同じクラス、つまり2年F組のリア充グループのリーダー、葉山隼人は一色が生徒会と掛け持ちでマネージャーを務めるサッカー部のキャプテンでもある。 爽やかなイケメンで成績も学年トップクラス、父親は弁護士で家はお金持ちという、三拍子どころか三三七拍子くらい揃ったリア充の中のリア充だ。 そのリア充度たるや、俺と並んで立たせるだけでもう格差社会の縮図と言っていいレベル。 こいつ、自ら特大の地雷を踏みにくるとは大したハートロッカーだな。 雪乃「そう言えば一色さん、あなた部活に出なくて構わないのかしら?もう練習は始まっているのでしょう?」 雪ノ下の指摘に、一色の薄い肩が一目でそれとわかるほどギクリと強張る。 一色「…だって外、寒いじゃないですか」来客用に出された紙コップの紅茶をすすりながらおずおずと答えた。 八幡「…そりゃ寒くて当然だろ、冬なんだし」 千葉は一年を通して比較的気候が温暖な地域なのだが、だからといって冬が寒くないというわけでは決してない。 逆になまじ暖かいからこそ千葉県民の寒さに対する耐性は全国一低いといって過言ではないだろう。 加えてここのところこの部屋で唯一の暖房器具であるヒーターの調子が今一つ良くないせいもあってか、今日は殊更寒く感じられる。 部屋の中でさえこれなのだから、海からの風が容赦なく吹き付ける屋外はもっと寒いに違いない。 一色「あ、それにマネージャーは他にもいますし、葉山先輩には生徒会の仕事で休みますって伝えてもらってありますから」明らかにとってつけたような言い訳を口にする。 八幡「いや誰がどう見てたってお前、仕事なんて一ミリだってしてねぇだろ」ダベってお茶飲んでるだけで仕事してますとか、なんだよその夢ジョブ。 08 ID:fXDvOLLe0 一色「…でもあのふたり、最近仲が良すぎちゃって、正直ちょっと生徒会室にいづらいってのもあるんですよね」 もの憂げな感じで小さく呟く一色に、俺たちはそろって顔を見合わせる。 なるほど、確かにさして広くない部屋の一方で、イチャコラキャッキャウフフとかしてるのを見せつけられたりしたら、色々とやりづらい面もあって当然だろう。 それに実のところ、一色は昨年のクリスマスシーズンに東京ディスティニーランドで葉山にコクってフラれたばかりなのである。 冬休みというインターバルがあったにせよ、やはりそうそう気持ちの切り替えができるというものでもあるまい。 雪ノ下にしてもそれは同じだったのだろう、それ以上は何も言わず、ティーポットを片手に静かに立ち上がると、手ずから一色の紙コップにそっと温かい紅茶を注ぎ足した。 「スミマセン。 アリガトゴザイマス」神妙な顔でぺこりと頭を下げる一色に対し「いいのよ」と言いながら柔らかな笑みを浮かべる雪ノ下。 そんなふたりを由比ヶ浜が優しい目で見ている。 俺の視線に気がついた雪ノ下がポットを小さく掲げ「あなたもどう?」と目で問うてきたが、猫舌の俺は軽く首を振ってそれに答える。 こうやって見ると雪ノ下も初めて会った頃に比べて随分物腰が柔らかくなったものである。 68 ID:fXDvOLLe0 八幡「ま、アレだ。 壁ドンだの顎クイッとか言ってもだな、好きでもなんでもない男がやったら、それこそただのパワハラやセクハラ扱いされるだけなんじゃねぇの?」 だいたいなんだよ萌えシチュって。 シチュー焼いたらそれもうフツウにグラタンだろ。 雪乃「あら、執行猶予期間中のあなたが言うとさすがに説得力が違うわね」雪ノ下がクスリと小さく笑う。 八幡「ばっかお前、何言っちゃんてんだよ。 壁ドンはともかく、こう見えて壁打ちとか壁パスなら超得意なんだぜ?なんせ体育の授業中は誰もペア組んでくれなかったからいつもずっとひとりでやってたし」 結衣「なんか理由が悲しすぎるっ?!」 一色「先輩って、お友達もいなかったんですね」少し俯き加減だった一色もようやく顔を上げ、小さく笑みを浮かべて会話に加わる。 ボールが友達だったんだよっ!」どこぞのキャプテンだって言ってるだろ。 正直、友達を足蹴にするのはどうかと思うが。 それってイジメじゃね? 雪乃「そうね。 それにあなたの場合、暗い部屋の中で毎晩話しかけているくらい壁とも仲良しですものね」 八幡「いやそれは女子にキモいとか言われて落ち込んだ時だけ…って、なんでお前そんなことまで知ってんだよっ!」 結衣&一色「…うわぁ」おいよせお前ら憐みの目でこっち見んじゃねぇよ。 せっかく湿った空気変えようとしただけなのに、いつの間にか俺の方がよっぽど可哀想なヤツ扱いされてんじゃねぇか。 42 ID:fXDvOLLe0 一色「でも、壁ドンに関して言えば、確かに先輩の意見にも一理あるかも知れませんね」一色が何事か考えるかのように人差し指を頬に当てる。 ダブらせたカーディガンの袖口から覗く、その白くて華奢な指先が狙い過ぎててなんかあざとい。 何をどう言ったところで、所詮、人は見かけだけでほぼ8割方決まってしまうものなのだ。 雪乃「なるほど。 つまり比企谷くんの場合、裁判員制度は圧倒的に不利ということね?」雪ノ下が納得したかのようにふむふむと頷く。 23 ID:fXDvOLLe0 一色「あ、そうだ!だったらいっそのこと、実際に試してみませんか?」 八幡「あん?」 結衣&雪乃「…試すって?」「…何を試すのかしら?」 にこぱぁっと、今日、部室に来てから一番の笑顔を見せる一色とは対照的に、由比ヶ浜と雪ノ下が揃って訝しげな顔をする。 俺に至ってはまるっきり嫌な予感しかしてこない。 俺たちの当惑を他所に一色は何を思ったのかいきなり椅子から立ち上がると、そのままとことこと部屋の端まで歩いて行き、短く詰めたスカートの裾をふわりと翻し壁を背にして立つ。 …って、なに?お前もしかしてゴルゴなの? 一色「…という訳で先輩、ヘイヘイ、カマンカマン。 だが、両手で小さくおいでおいでとしてるところを見ると、どうやら俺にそれをやれ、ということらしい。 一色「実はちょうど私もいつ葉山先輩から壁ドンされても舞い上がらないように、少し慣れておいた方がいいかなって考えていたところなんです」 ぬけぬけと言ってのけるその心臓には呆れるのを通り越して感心してもいいくらいなのだが、やはりどう考えても呆れる以外の選択肢が思い浮かばない。 八幡「おう、そうか。 なんか知らんがとりあえず頑張れよ」言いながら再びスマホの画面に目を落とす。 一色「ちょ、なんですか、その反応?!いいじゃないですか、どうせヒマなんだしっ!」 八幡「一緒んすんじゃねぇよ。 こちとらお前の相手してるほどヒマじゃねぇーんだよ」 一色「ハイそこっ!とかなんとか言いつつ、なにカバンからマンガ本取り出してるんですかっ!?」 八幡「…ちっ、うるせーな。 そんなにヒマなら部活出りゃいいだろ、部活」 一色「それができるんだったら、こんなとこいるわきゃないじゃないですかっ!」 完全に逆ギレとしか思えない一色の暴言に、由比ヶ浜も苦笑いを浮かべ、雪ノ下でさえ呆れ顔である。 雪乃「いくら比企谷くんがいるからって、こんなところって…。 この子ったら、自分がとても失礼なこと言ってることに全然気がついていないのかしら?」 八幡「いや、それを言うならお前も俺に対しては大概だけどな」 雪乃「あなたこそ失礼ね。 八幡「…だから誰もやるだなんて、ひとっ言も言ってねぇだろ」お前人の話をちゃんと聞きなさいって学校で習わなかったのかよ。 一色「あ、そんなこと言うんだったら私、奉仕部に依頼しちゃいますよ?!それなら文句…じゃなかった、問題ありませんよね?!」 むんっとばかりに得意げに胸を張って見せるのだが、残念ながら目視では顕著な変化は観測できない。 せいぜいミリ単位、誤差の範囲内だ。 八幡「…アホかお前。 それに正確には解決するのではなく、解決するための手助けをするところ、ね」一色の率直な問いに雪ノ下が部長として答える。 一色「それって、何が違うんですか?」顔中にハテナマークを浮かべて俺を見た。 八幡「ああ、つまり、俺たちはあくまでも依頼人に力を貸すだけであって、問題を解決できるかどうかは本人次第ってことだ」 一色「…ふーん」 わかったようなわからないような顔をしているが、大抵そういうヤツに限って実はよくわかっていない。 ほれみたことか。 こってり絞られて海よりも深く反省しろ。 だから昆虫の中ではむしろ長生きと言えるわね」 結衣「って、そっちなんだ?!」 八幡「…出たなユキペディアさん」なんでそんな無駄に広い知識披露すんだよ。 しかも今このタイミングで。 雪乃「でも、孤独で暗い十七年間を過ごしてきたという点では、比企谷くんはまさに十七年ゼミね。 なるほど、ある意味、的を得ているといってもいいわ」ふむふむと一人頷く。 八幡「何気に酷いこといってんじゃねーよ。 とりあえずお前は今すぐ全力で謝れっ!」 雪乃「あら、ごめんなさい。 どうしてもやりたんだったら、他当たれ、他」 一色「えー、そんな事言われても私、先輩の他にこんなこと頼めそうなキモい男子に心当たりないですし…」 八幡「ちょっと待て、お前、今、俺のことつかまえてさらりとキモいとか言わなかった?」 一色「あ、ごめんなさい。 ほら、私って嘘つけない性格なんで」 八幡「それ、明らかに謝るとこ違うよね?」 一色「それにこの場合、壁ドンという行為そのものに効果があるかどうかの検証なんですから、イケメン相手じゃ意味がないじゃありませんか」 八幡「…………こほんっ。 いいか一色?葉山ほどではないにせよ、目が腐っていることと働いたら負けだと考えていること以外、基本俺はハイスペックなんだぞ?」 顔立ちもそれなりに整っている方だし、現国は常に学年三位をキープしている。 運動神経だって決して悪くはない。 それになんといっても小町という超可愛い妹がいるというだけでもう間違いなく圧倒的な勝ち組。 雪乃「…その前提条件からして既に全てを台無しにして余りあるわね」 結衣「…しかも、自分からハイスペックとか言っちゃってるし」 八幡「うるせーよ。 八幡「お、それだ!由比ヶ浜が珍しくいいこと言った!」お父さん思わず感動しちゃったよ。 結衣「ちょっ!珍しくとか超余計だしっ!」 確かに一色のような男好きのしそうなゆるぽわビッチであれば、喜んで協力してくれそうな男なんぞ、それこそいくらでもいるだろう…その分、女子からは嫌われてそうだけど。 雪乃「そうね、この時間ならまだ知り合いが学校に残っているんじゃないかしら?」 一色「え? えっと、あー…、そうですねー…」なぜか取り乱す一色。 お前、今、目がカジキマグロ並みの勢いで泳いでんぞ。 八幡「って、だからそうじゃねぇだろ。 お前らなに勘違いしてんだよ。 もしかしてまだ名前覚えてないのかしらん? そんな事を考えつつ、俺はそろそろ冷めたであろう頃合いを見計らって手元の湯飲みをそっと口に運んだ。 私にだって選ぶ権利くらいありますよー」チラッ(八幡を見る) 結衣「あはは、だよねー」チラッ(八幡を見る) 雪乃「うふふ、そうよね」チラッ(八幡を見る) 八幡「…うんうん、お前らそうやってさりげなく笑顔で俺をディスるのやめような?」うっかり自殺しちゃったりしたらどうすんだよ。 結衣「でも、どうして年上がいいの?」 一色「え?だって年上の方が何かと頼れるしー…それに」 結衣「ふんふん、それに…?」 一色「デートの時とかもワリカンじゃなくって全部奢ってもらえそうじゃないですかぁー」ニヤァっと、それこそ腹の底まで透けて見えそうなほど真っ黒な笑みを浮かべて見せた。 …うわー、その話、聞きたくなかったわー…。 邪魔しちゃ悪いですし」 ないない、とばかりに手を振る。 でも前半のそれ、いらなくね? 八幡「なら、材木座のヤツ召喚…じゃなかった…紹介やろうか?あいつなら四六時中ヒマしてるから呼べばすぐに来ると思うぜ?」 一色「は?ざい…?なんですかそれ、産廃?」材木座と聞いて、面識のない一色が戸惑いの表情を浮かべる。 八幡「…いや産廃じゃねぃだろ。 でも敢えてひと言で言えば…言うとするならば…」 首をほぼ直角に曲げるようにして散々考えあぐねいた挙句、俺を見てふと何か思いついたらしく胸の前で手をポンと打った。 29 ID:8WS3sg8r0 八幡「…ちっ、ダメだ。 出やしねぇ」 とりあえず材木座に連絡してはみたのだが、今日に限ってなぜか繋がらない。 普段はワンコールで出やがるくせに、アイツってばホンっト肝心な時に全っ然役に立たねぇし使えねーのな。 まぁ、知ってたけど。 一色「ふーん、それは残念ですねー…」 スマホのミラーアプリを使って前髪をいじくりながら一色が応じる。 って、お前いくらなんでも棒読み上手すぎだろ。 さっきも言っただろ?俺たちはあくまでも力を貸すだけだからな」 俺のその言葉に、一色ばかりか、雪ノ下と由比ヶ浜も少しばかり意外そうな顔をする。 確かに今までのように効率のみを重視するだけだったら、俺がやった方が遥かに手っ取り早いしやりやすい。 だが、昨年の修学旅行の嵐山の一件の事もある。 たとえ依頼を解決する為の手段だとはいえ、あれがもし逆の立場だったら、もし彼女たちのどちらかが俺と同じ行動をとろうとしていたならば、俺は何だかんだ理由をつけて間違いなく止めていただろう。 何とはなくだが、そう思った。 雪乃「そうね。 私も比企谷くんで試すのは、その…どうかと思うのだけれど…」 結衣「う、うん。 あたしもそう思う!」 肯うふたりの口許が心なし綻んでいるところを見ると、どうやら俺の判断は間違っていないようだった。 41 ID:8WS3sg8r0 一色「はぁー…そうですか…」一色が溜息をつく。 その口振りからすると、どうやらやっと諦めて… 一色「…せっかく先輩方も一緒にどうかなって思ってたんですけど」 雪乃&結衣「……………え?」 一色の言葉に雪ノ下と由比ヶ浜が同時にピクリと反応を示した。 シンクロ率で言えば120パーセントくらい。 お前らいったい何チルドレンなんだよ。 結衣「…えっと、そ、それって、もしかしてあたし達もヒッキーに壁ドンされる…ってこと?」由比ヶ浜が少し食い気味に訊ねる。 一色「え? あ、はい。 どうせなら私だけじゃなくって、他の方の意見も参考に聞いてみたいし?」一色はそこで一端言葉を切り、 一色「…でも、当の先輩がノリ気じゃないんだったら仕方ありませんよね…」 さも残念そうな様子を装いながら、チラリと俺に向けて意味あり気な視線を送って寄越した。 おお、さすがはクール・ビューティー雪ノ下さん!そこにシビれる憧れるぅ! 雪乃「…………でも、奉仕部に対する依頼、ということであれば致し方ないわね。 八幡「や、ちょ、お前ら、嫌なら別に無理して引き受けなくたって…」 結衣「あ、ほらほらっ!ヒッキー、早くするしっ!さっきからいろはちゃんがずっと待ってるんだから!」 雪乃「比企谷くん、さっさとなさい。 まったくあなたときたら本当にクズのうえにグズなんだから」 …え?なに?なんかお前ら、急にノリノリになってねぇか?って言うか今の今まで反対してなかった?手のひら返すの早すぎだろ。 阿波踊りかよ。 02 ID:8WS3sg8r0 差し込む陽の光が金色に輝く放課後の部室。 俺は壁を背にした後輩と向かい合って立つ。 ふとした拍子に会話が途切れ、二人の間に少し居心地の悪い、それでいて胸の切なくなるような、そんな不思議な沈黙を落とす。 「…あの…せん…ぱい…?」 着崩した制服の襟許から覗く薄く静脈の浮いた瑞々しい白い肌と小さな鎖骨の窪みが、やけに眩しい。 「お、おう?」ゴクッ 俯き加減だった後輩が不意にその顔を上げ、潤んだ大きな瞳でじっと俺を見つめる。 その差し迫ったような表情と微かに漏れる苦し気な息遣いに不覚にも鼓動が早くなる。 彼女は、すっと視線だけを斜めに落とし、自らの手でしゅるりとリボンタイの結び目を解くと、小さく震える声でそっと囁く。 …なんなのこの羞恥プレイ。 一色「はいっ。 あ、でもちょっと待ってください」 一色が掌を俺に向けてストップをかける。 八幡「って、今度は何なんだよ」 一色「女の子には女の子の準備ってもんがあるんです」 ぶつぶつ言いながら一色はさらさらと前髪を直し、スカートの裾を引っ張って整える。 そして「んっんっ」と喉の調子を整えるように軽く咳払いすると、おもむろに胸元で拳をきゅっと握りしめ、顔を俯けて湿った吐息をひとつ。 壁と俺の間に挟まれる形で身体を縮めた一色は、ただでさえ細くて小柄な体が常より更にか弱く小さく見え、俺を見る目が不安に揺らいでいる。 一色「…え、あ、ご、ごめんなさひ…」 先程までの先輩を先輩とも思わぬような不遜な態度はどこへやら、消え入るようなか細い声は次第に尻すぼみとなり、 一色「…ひぐっ、ひぐっ、先輩怖いですぅ~」 遂にはしゃくりを上げてマジで泣き始めてしまった。 黒く長い髪、ややキツめではあるがスッキリと整った目鼻立ち、黒のパンツスーツに白衣の上からでもわかるメリハリの効いたシルエット。 いつの間にか部室の戸口には、奉仕部の顧問である平塚静先生がこちらを見ながら呆然と立ち尽くしていた。 そしてその視線の先には、半ばシャツの胸元のはだけた涙目の女子生徒と、その彼女を壁際に追い詰めたであろう腐った目の男子生徒。 事情は大体わかった」 スラリと伸びた長い脚を組んで椅子に座し、ひと通り俺の釈明を聞いた平塚先生がふむふむと頷く。 って、この先生、いったい何をどう理解したんだよ。 つか、その前に何で俺、床に正座させられてるわけ? 俺は助けを求めて、ここ何度目かの、すがるような視線を再び雪ノ下と由比ヶ浜に向けて送ったのだが、 雪乃&結衣「つーん」 ……… やはりなぜか二人揃って無視されてしまった。 85 ID:8WS3sg8r0 平塚「よし、そうと分かれば話は早い。 ものは試しというヤツだ。 比企谷?」 言いながら平塚先生が顎で壁を指す。 八幡「…へいへい」 多分、そうくると思ったぜ。 既にいろいろと諦めてしまっていた俺は、まるでマハトマ・ガンジーもかくやという無抵抗主義の境地に浸りながら、言われるがままにノロノロと立ち上がった。 平塚「…いや、キミはそこに立ってこちらを向きたまえ。 そう、そこだ」そういって空いた壁の一角を指さす。 八幡「や、壁ドンってのはフツウ、女子の方が壁に立つ…」 ブンッ 皆まで言い終えるよりも早く、突然耳元で風を切る音が聞こえ、 バゴンッ 一泊おいて、いきなりものすごい音と衝撃が教室全体をビリビリと揺るがす。 咄嗟に働いた生存本能のお陰で何とかかわしはしたものの、側頭部の髪の毛が数本もっていかれ、足元にはパラパラと塗料の破片が舞い落ちた。 38 ID:8WS3sg8r0 平塚「…………チッ。 外したか」 舌打ちしながら睨みつけるその目が完全に据わっている。 明らかにやる気…いや、[ピーーー]気満々だ。 全身から噴き出す殺気のオーラが俺の肌にビシバシ伝わってきた。 平塚「…キサマ、なぜ逃げる?」 八幡「いや、逃げるだろフツウ!つか、何すんですか、いきなりっ?!」 平塚「…何、とは異なことを…壁ドンにきまっておるだろう」 …違うし。 それ俺の知るどんな種類の壁ドンとも全然違うし。 なんなら壁ドンですらないし。 57 ID:8WS3sg8r0 一色「でもすごい威力ですね。 あちゃー…、なんか壁の表面にヒビ入ってますよ?」 平塚先生が殴った壁面をしげしげと眺めながら一色が嘆息を漏らす。 どうやらとうに涙は引っ込んだらしい。 うん、八幡知ってる!女の子の涙なんてだいたいそんなもんだよね!だって小さい頃から散々小町に騙されてきたもん。 嘘泣きは女の子のはじまりだよっ!みんなも気をつけてねっ! 平塚「ふっ。 どうだ、比企谷。 見眼麗しい年上女性に壁ドンをされたのだ、少なからず胸がときめいたのではないか?ん?」 満面の笑みを浮かべたそのドヤ顔が少しばかり、いや、はっきり言ってかなりウザい。 八幡「…確かに俺の心臓はまだバクバクしてますけど、多分それ、違う理由からだと思います」 率直な感想を述べた。 つか、そんなの食らったら恋に落ちる前に地獄に落ちるっつーの。 相手のハート射止めるどころか心肺停止させてどうすんだよ。 平塚「なに、心配はいらん。 何のためにAEDがあると思っているのだね?」 八幡「…少なくともこの時のためじゃないことは確かだと思います」 その言葉のどこをどう探しても、とにかく安心とか安全とか明るい安村という要素が全くといっていいほど見当たらない。 明るい安村関係ねぃか。 平塚「…それにしても、思いのほか壁ドンというものは難しいものなのだな」 握り締めた拳をしげしげと見つめながら、何が違うのだろう、といった感じで溜息を吐く。 俺に言わせてもらえば一から十まで違うところだらけで、それこそ掠りもしていないのだが、敢えてそれは口にはしない。 だってこの人、面倒臭いし。 平塚「…はっ!?そうか、角度かっ?!角度だなっ?!もっと、こう、脇を締めて内側から抉り込むように、打つべしッ、打つべしッ!」ビュン ビュン …うん、やっぱダメだわこのひと。 教師云々以前に人間として問題ありすぎだろ。 戦闘力上げる前に女子力上げようよ。 もしかして今頃、片っ端から通行人捕まえて無差別にさっきみたいな壁パンひたすら繰り返してんじゃねぇだろーな。 それってもう立派な犯罪行為だろ。 テロだろ、テロ。 校門の前で取材されたら「いつかやると思ってました」としか答えようがねぇだろ。 八幡「…つか、まだやんのかよ。 もういいんじゃね?」 正直、俺、早くおうち帰りたいんですけど。 何で壁ドンで命の危険に晒されなきゃならねぇんだよ。 一色「まぁまぁ。 やっぱりこういった事は、できるだけサンプル数があった方が参考になりますし?」 結衣「えっと、ヒッキーはイヤ…なの…?」由比ヶ浜がおずおずと問うてくる。 八幡「や、別にそういうわけじゃないんだが…」 実のところ、昨年来、修学旅行から生徒会長選挙にかけて二人との間で色々とあったせいで、今だ互いの距離感をつかみかねるものがある。 だからという訳でもないのだろうが、こうして改まって正面から、それも間近で顔をつき合わせるとなると何かしら面映ゆいのもまた確かだった。 …って、何意識しちゃったりしてるんだ俺は。 キモチ悪い。 それこそ自意識過剰ってもんだろ。 結衣「う、うん。 そ、そうだね」 応えながらも由比ヶ浜がなぜか遠慮がちにそっと雪ノ下の横顔を窺うのが見えた。 もしかしたらこいつも、俺と同じような思いをずっと抱えていたのかも知れない。 だとすれば、やはりこれが何かの契機となり、以前のようにごく普通に接することができるようになれば、それに越したことはないのだろう。 別に開き直った、というわけでもないのだが、俺は今のこの状況をできるだけ前向きに捉えることにした。 雪乃「由比ヶ浜さん、どうかしたのかしら?」 由比ヶ浜の視線に気が付いた雪ノ下が優しく声をかける。 結衣「ん、うううん。 な、なんでもないの」 雪乃「胸ヤケの薬なら常備しているから遠慮しないで。 気持ちが悪くなったらすぐに言うのよ?」 結衣「あ、うん、平気、平気、大丈夫だから。 そして一色と同じように壁を背にして立ち深々と深呼吸をすると、まるで気合を入れるかのように自分の頬を両手でペチペチと叩いた。 つか、そもそも掛け声とかいんのかよ。 八幡「おわっ?!」 その拍子に壁に向けて伸ばしたはずの手がまるっきりあさっての方向に突き出され、 …むにゅ 何やら弾力のある物体に触れて止まる。 「え?」「お?」 なにこれ?なんか超やわらかいんですけど?……………もみもみ。 だが、これで済むはずもないし、俺もこのまま終わらせるつもりはない。 八幡「材木座…」 ゆらぁり… 材木座「…は、はぽん?」 八幡「…キサマ、北斗七星の脇に輝く蒼星を見たことがあるか?」ゴゴゴゴゴゴ… 材木座「あばばばばばば?」 材木座の顔色が、まるでネズミに耳をかじられた猫型ロボットのように青くなり、その表面からは滝のような汗がダラダラと流れ落ちる。 材木座「…い、いや、たまたまこの近くを通りかかったら、お主からの着信に気が付いたもので…」 八幡「言い訳すんじゃねぇっ!」ゲシゲシッ 材木座「ひぃっ!な、なんと無体な仕打ちっ?!」 一色「あのー…先輩、お取込み中スミマセン…それ、もしかして…?」一色が恐る恐る俺に声をかけて来た。 八幡「…ん?ああ、コレか?コレがさっき俺が話した…うぉっ?!」 いきなり材木座がむっくりと起きあがったかと思うと、そのまま何食わぬ顔でぱたぱたと衣服に付いた埃を払い、襟を正す。 そして、おもむろにバババッとコートの裾を翻し、指抜きグローブの中指でメガネのブリッジをくいっと持ち上げた。 材木座「左用!天知る地知る人が知る!隠れもなき我こそは、その名も高き剣豪将軍、材木座義輝その人であ~るっ!愚民共よ、我を崇めよっ!」シュバババババッ 八幡「………って、お前、どこ向いて言ってんだよ。 材木座、お前も一応、ゴミカスワナビとはいえこのガッコの生徒の端くれなんだから名前くらい知ってんだろ?」 雪乃「…比企谷くん、この際ワナビはあまり関係ないと思うのだけれど」 結衣「ゴミカスはそのままでいいんだっ?!」 材木座「なぬぅっ?!生徒会長…だと…」俺の言葉を聞いたゴミカス…いや、材木座の顔色が瞬時にして変わった。 一色「へっ?な、なんですかっ?」一色が慌てて俺の背後に逃げ込む。 だが材木座はその口許をキツく引き結んだまま、鼻息も荒くずずずいっと進み出た。 近ぇよ。 それに暑苦しい。 一色「や、ちょっ、け、ケーサツ呼びますよっ?!私見かけと違ってあんまり美味しくないですよっ?!ってか先輩、早くそれ駆逐しちゃってくーだーさーいー!!!!」 叫びながらぐいぐいと俺の背中を前へ前へと押し出そうとする………って、お前ね…。 一色「……へ?」 八幡「…お前、今、選挙前後の政治家みたいに態度豹変してんぞ?」 こいつってば権力とか権威って言葉にやたらと弱いのな。 強いものに弱く、弱いものにも弱い。 それがブレることなき安定した材木座クオリティ。 なんか俺、いつ間にかこいつのオーソリティみたくなってねぇか? 結衣「…中二、カッコ悪るぅ」 雪乃「…ある意味、清々しいほどのクズッぷりね」 由比ヶ浜と雪ノ下もほとほと呆れ果てた顔で後輩女子にへりくだる材木座の姿を見ている。 一色はというと、俺の背後から肩ごしに材木座の姿を頭の天辺から爪先に至るまで値踏みするかのような目でひとしきり、じっと眺めていたかと思うと、やがてひと言、 一色「…チェンジ」ボソッ いきなりばっさりと切って捨てやがった。 いや、いきなりチェンジって、おまえどこの大統領だよ。 もっとも、材木座じゃ壁ドンというよりも、相撲部屋の鉄砲の稽古みたくなっちゃいそうだから仕方ねぇか。 材木座「では八幡よっ、しゅらばだっ!」 …いや、お前には幼馴染も許嫁も元カノもフェイクな彼女もいねぇだろ。 一色の指名を受けた雪ノ下が、大仰に溜息をつきながら席から立ち上がる。 だから壁に手が届く距離で相対するとなれば、自然、雪ノ下とかなり近づいてしまうことになる。 陽の光を浴びて輝く漆黒の黒髪とその髪と同じくらい深く濃い色を湛えた美しい瞳、瞬く長い睫毛。 対照的に白い磨きぬかれた大理石のような肌、通った鼻筋、薄桃色の唇。 性格はともかく、見てくれだけは学年一、いや全学年を通じてトップクラスと呼び声が高い美少女が相手だ。 緊張するなという方が無理というものだろう。 …やべっ、こんな時に。 いきなり昨年の恥ずかしい記憶がフラッシュバックする。 なにこれもしかして走馬灯?俺もしかして壁ドンで雪ノ下にカウンター喰らって死んじゃうの? 雪乃「比企谷くん、どうかしたの?いつも以上に挙動不審で、無様なのを通り越して正直、気持ち悪いくらいなのだけれど」 雪ノ下が俺を見る目がマジで引いている。 だが、聡い雪ノ下はそれだけで何かを察っしたらしく、不意にその形のよい唇を小さく「あ」の字に形作ると、白い頬を瞬く間に赤く染めた。 ……………………… どうやらお互い共有する記憶がリンクしてしまったようですね。 まさに壁ドン。 違う意味で。 細いが暖かく、そして柔らかな感触。 俺の首筋にかかる湿った吐息。 ベルベットのような髪の質感、ふわりと漂うサボンの香り。 思い出したように、もぞり、と、俺の身体の下で小さく雪ノ下が動いたせいでより一層密着感が増す。 見るとその艶やかな黒髪が一筋、俺のブレザーのボタンに引っかかっている。 雪乃「…ふぅ。 仕方ないわね。 由比ケ浜さん、私のカバンに裁縫セットがあるから、ハサミをとってもらえるかしら?」 俺がもたもたしているのを見かねた雪ノ下が、そのままの姿勢、つまり俺の胸にもたれかかった状態のまま、自分の肩越しに由比ヶ浜に声をかけた。 一色「…裁縫道具いつも持ち歩いてるなんて、雪ノ下先輩って女子力高いんですね」 一色がまるで場違いな感想をぽしょりと漏らす。 雪乃「…由比ヶ浜さん?」 再度、雪ノ下が声をかける。 今のこの体勢からでは由比ヶ浜の姿が見えないせいもあってか、その声にはいくらか怪訝そうな響きが含まれた。 結衣「…あ、ごめん。 うん、ちょっと待ってて」 由比ヶ浜は慌てて雪ノ下のカバンからパンダのパンさんの絵柄のついた裁縫セットを探し出し、中にあった小さなハサミをそっと差し出す。 不本意ながらも重なり合ったままの俺達に向けたその目が微かに揺れ動いているのが見えたが、髪に気をとられている雪ノ下の方はその表情の変化にまるで気がついていない。 比企谷くん、代わりにお願いできるかしら?」 八幡「…あ、ああ」 俺は由比ヶ浜の表情に何か引っかかるものを感じながらも、とりあえず今は目の前の出来事へと意識を戻した。 だが、その瞳は驚いたかのように大きく見開かれている。 八幡「ん?どうかしたのか?」 雪乃「どうかしたって…あなた、私の髪じゃなくて、ボタンの紐の方を切ってしまったの?」 八幡「…当たり前だろ。 他にどうしろっつーんだよ?」 別にただの紐だからといって蔑ろにしたわけではない。 例のひもとか超人気だし、色々な意味で俺も将来ヒモになりたいくらいだし。 ふと目を遣ると、由比ヶ浜と一色もぽうっとした表情で俺を見ている。 八幡「バレるわっ!全っ然っ似てねーしっ!」 だいたい俺がそんな恥ずかしいセリフ、絶対口にするわきゃねーだろ。 そんな俺見て雪ノ下は何か言いかけたようだが、結局何も言わずに床に転がった俺のボタンをそっと拾い上げた。 ボタン、つけなおすから」 雪ノ下が憮然とした表情で俺に告げる。 八幡「や、それくらいなら家に帰ってから自分でできるし…」 自慢ではないが小さい頃から両親が共働きで帰りも毎晩遅かったせいか、大抵のことならひとりでできる。 逆にひとりでできないことはまるでできないまである。 雪乃「いいからかしなさい」 少し怒ったような声で雪ノ下がもう一度繰り返した。 八幡「…お、そ、そうか、スマン」 よく考えてみればコートを上に着ればそれで済むことだったのだが、雪ノ下の圧に押し切られるような形でそれを受け取ると、暫し躊躇った後、結局そのまま肩に羽織ることにした。 ふわり、と、さきほどの雪ノ下と同じ香りが漂う。 まるで彼女自身に優しく包み込まれたれたような気がして、何だか妙にこそばゆくて気恥ずかしい。 誰も何も言葉を発しない部室では、時折咳き込むような音を立てるヒーターと、吹きつける風で揺れる窓のカタカタという音ですら妙に大きく響いて聞こえる。 由比ヶ浜は先程からそわそわと身じろぎしながら、雪ノ下を見、その目を今度は俺へと移し、そして膝の上に揃えて置いた自分の手にと落とすという仕草を繰り返している。 一色「あー…えっと…そだ、あの、どうでした、壁ドン?」 沈黙に堪えかねたかのように一色がおずおずと口を開くと、雪ノ下の手がぴたりと止まった。 雪乃「別に…今までと何ら変わりはないわね」 素っ気なく答え、また作業へと戻る。 萌えシチュだか焼きカレーだか知らんが、好きでもなんでもな…」 雪乃「…変わらないっていったのよ」 雪ノ下が被せるように小さく呟く。 八幡「…お、おう、そうか…その、さんきゅーな」 雪ノ下の態度に釈然としないものを感じながらも、一応、礼を言ってから、仄かに彼女の移り香のするブレザーに袖を通す。 雪乃「…どういたしまして」 雪ノ下はこちらを見ることもなくそう返事を残すと、そそくさと俺から離れカバンに裁縫セットを仕舞う。 11 ID:McnoHoig0 部室の戸締りは部長である雪ノ下の役目なのだが今日は二人を先に返し、俺が施錠して職員室まで鍵を届けることにした。 たまにはそんな日があってもいいだろう。 ぼっちであることを寂しいと思った事など久しくないが、今だけはなぜかひとりでいられる事が無性にありがたく感じられた。 放課後の特別棟はひたすらガランとしていて、人の気配はまるでなく、そのせいかただでさえ冷えた冬の空気で余計に寒々しく感じられる。 「寒ぶっ」ぶるりと身震いをひとつ。 慣れない手つきで、古くなったせいか少し強情になった鍵に暫く手こずりながらも、ようやく鍵を掛け終える。 一色「ホントはわかってるくせに」 後ろ手のまま壁に寄りかかり、光の加減なのか妙に大人びた表情を浮かべて俺を見ている。 その時の俺は多分、後輩女子の戯言に付き合う気が失せるほど疲れ切っていたのだろう。 床に置いたカバンを左手で肩に背負うと、そのまま無言で一色の脇を通り過ぎようとした。 58 ID:McnoHoig0 すれ違いざまに浴びせかけられた嘲るような声に、まるでいきなり頬を張られたような衝撃を受け、一瞬、怒りのあまり目の前が真っ暗に反転する。 バンッ 気がつくと向き直り様、一色を挟み込むかのようにして、右の掌を壁に思い切り叩きつけていた。 じわりと鈍い痛みが掌から手首へと伝わってくる。 湿った吐息がお互いの顔にかかるほど近い。 だが一色は、先ほどのように怯えて見せることもなく、ただただ俺の目をじっと見つめ返してきた。 そのあまりに真っ直ぐな視線に耐え切れず、いつの間にか俺は自分の方から目を逸していた。 10 ID:McnoHoig0 一色「…今日の、アレで、少しは何か進展しました?」挑発的だが、僅な語尾の震えがそれを虚勢であることを明瞭に物語っている。 八幡「…お前、もしかして」 一度逸らした目を再び後輩へと向ける。 一色「…私って、他人がいいなって思う相手には、とりあえず手を出したくなるタイプなんですよね」 変に隠さず、はっきりと告げるその顔に小悪魔めいた笑みが浮かぶ。 八幡「…生憎と、俺たちはそういうんじゃねーんだよ」 搾り出す声が自分でもそれとわかるほど掠れた。 では、何なのか、と問われたら返しようがない。 自分自身にさえ、その答えが未だ何なのかわかっていないのだから。 答えを出すことを先送りにしているのだから。 だが、一色はそれ以上追求はしてこず、その代わりに突き出された俺の手に、冷たくなった自分の手を添え、そっと柔らかな頬をすり寄せた。 一色「…だったら」言いかけた言葉を故意に途中で途切れさせる。 03 ID:McnoHoig0 微かに震える睫毛を見つめながら、永遠とも思える数瞬が流れた。 俺は自らの意思の力を総動員して視線を引き剥がす。 八幡「…バカなこと言ってねぇで、お前も早く帰れ」 頭に掌を乗せ、くしゅりとひとつ優しく撫でると、まるで何かの魔法でも解けたかのように一色がぴくりと反応した。 一色はゆっくりと目を開き、小さく溜息をつくと、するりと俺の脇を抜けて少し離れた位置に立つ。 そして 一色「さっさと決めちゃえばいいのに」 つまらなそうにそう口にして、そのまま俺に背を向けた。 15 ID:McnoHoig0 つかみかねる距離感。 ぎこちない空気。 それもこれも慣れない人間関係と、ちょっとした言葉や気持ちのすれ違いから生じるものだとばかり思っていた。 そう思い込もうとしていた。 だが、他人に言われるまでもなく、俺たち三人の関係は以前とは確実に少しづつ変化しつつある。 そうとは気がつかないうちに。 いや、気がつかないふりをしているうちに。 不意に、深く重いため息が口を衝いて出た。 だが、吐き出しても吐き出しても胸の奥底に沈むわだかまりは一向に消えることなく、逆に少しづつその質量を増して行く。 17 ID:McnoHoig0 独り言に似た小さな呟きが俺の耳に届いたような気がしたが、敢えてその考えを振り払った。 窓から差し込む斜陽で薄く長く引き伸ばされた自分自身の影を引きずるようにして俺は寒々した廊下を通り抜け職員室へと脚を向ける。 束の間、背後に残してきた空気が僅かに滲んだような気がしたが振り向きはしなかった。 20 ID:McnoHoig0 おしまいです。 vip2ch.

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